日本語能力検定の真実―N1信者の採用担当、N2の優秀留学生

僕はベトナムからの留学生、A。
東南亜細亜大学の4年生、周りの日本人がとっくに就活を終えるなか、まだ就活中だ。

母国にいる時から、コツコツ日本語を勉強してきた。
憧れの日本に留学に来てからは、授業に真面目に出席し好成績を維持している。
明るさにも、責任感にも自信がある。

1年前、やっと日本語能力検定2級(N2)を取得できたときは、素直に喜びを噛み締めた。
漢字を覚えるのは、やっぱり大変だな。
N1には今年挑戦したけど、惜しくも数点足りなくて落ちてしまった。

思えば、僕の大学生活は日本語能力検定に振り回されてばかりだ。

お気に入りの飲食店でアルバイトをしようとする。
『応募資格:日本語能力検定一級をお持ちの方』

就職活動で興味を持った企業にエントリーしようとする。
『必須:日本語能力検定一級(N1)』

学内の合同説明会を訪れる。
『留学生の方でも、N1ビザ持ちなら大丈夫です!』

どうしてこんなにも、日本企業は「N1」にこだわるのか。
友人BはN1を持っていて、確かに日本語は僕より少し上手いかもしれないけれど、
いつも遊びまわっていて、授業にまともに来ているのを見たことがない。
友人Cは日本語の勉強を始めたのが遅かったからまだN2だけど、
Bよりずっと日本語を話すのは上手いし、謙虚で笑顔が素敵なやつだ。

僕も、僕の周りの友人も、書類だけで落とされることに不満を感じている。
N2の僕と、N1のあいつとの差はそんなに大きいんだろうか―――

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(とある日系大手グループ食品メーカーにて)

「課長、昨日エントリーしてきた留学生のAくん、どうお考えですか」
「ああ、N2のやつだろ?日本語堪能な人って書いてあんのになあ、しっかり読めって話だよなあ」
「しかし課長、彼は成績がものすごく良いですし、丁寧に書かれたエントリーシートからも誠実さと熱意がよく伝わります。
日本語力も話してみないと分かりませんし、一度会ってみても良いんじゃないでしょうか?」
「だめだめ、だいたい母国にいる時から日本語勉強してきて、まだN1も取れないなんて、甘いんだよ。時間の無駄だ」
「・・・分かりました」
「とりあえず留学生ならN1のやつ頼む」

課長は頭の固い人間だ。スペックや肩書きですぐに人を判断しようとする。
留学生採用に関しては殊に保守的だ。
口ではグローバル化を唱えながら、こんなんじゃいつまでたっても、
グローバル化なんて実現しないんじゃなかろうか―――

そう心の中でつぶやきながら、俺はAくんに無機質なお祈りメールを送った。

 

(執筆担当:渡辺(アフリカ))
※この物語はフィクションです。

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